国内外のメディアや広告関連企業などでつくる「Originator Profile(OP)技術研究組合」(理事長=村井純・慶應義塾大学特別特区特任教授)は、総務省の「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業(令和7年度)」において、Web上の記事や広告の発信元を証明する技術「Originator Profile(以下、OP)」の開発と社会実装に取り組みました。このたび、メディア企業や自治体への導入実験、および広告主となる企業による広告配信実証を完了し、Webサイトや記事コンテンツを、その真正性が担保された状態で公開できることが確認できました。OP技術をWebサイトに導入するために必要なサーバー等の開発は実装に向けて大きく前進しました。
【本実証事業の成果のポイント】
1.メディア、自治体サイトへの導入と「なりすまし」防止の実証
大手メディアに加え、鳥取・愛知県などの自治体サイトにOP技術を導入しました(一部は試験導入作業中)。記事が「正規の発信者によるもの」であり「改ざんされていないこと」をブラウザ上で証明できる環境を構築しました。
2.自治体、民間企業が参加し、安全なデジタル広告取引を実証
広告主として、自治体や民間企業が参加して、OP付き広告を配信し、実際のデジタル広告商流上で、広告の発信主体を明示できることを確認しました。将来的に、「透明性の高い広告取引」の実現につながる結果です。
3.国際標準化に向けた技術仕様のグローバル公開と連携強化
W3Cの年次総会「TPAC 2025」においてOPの技術仕様を公開・発表し、国際的なWeb技術コミュニティにおける理解を促進しました。プラットフォーマーや海外メディア等のエンジニアに加え、来歴証明など近接技術の関係者とも協議を行いました。今後の協力体制構築に向けた合意形成につながる成果です。
①フェイクニュースと詐欺広告への対抗策
昨今、生成AIの悪用などにより、精巧な偽ニュースサイトや著名人を騙る詐欺広告が作られ、社会的な混乱や経済的被害を招いています。しかし、現在のインターネットには、その情報が「誰によって発信されたか」を確実に検証する仕組みが不足しています。OP技術は、Web上のコンテンツに「電子的な署名(発信者証明)」を付与することで、ユーザーが安全な情報かどうかを簡単に識別できるようにする技術です。本事業では、この技術を実際のWebサイトや広告取引に適用し、社会実装に向けた検証を行いました。
②メディアおよび自治体サイトへの導入
本実証では、メディア・企業、自治体のWebサイトに、発信者情報を証明するシステムを導入しました。これにより、読者はその記事が改ざんされていない真正性を自ら確認できるようになります。
実証に参加したメディア・企業、自治体
(メディア・企業)秋田魁新報社、朝日新聞社、京都新聞社、産経新聞社、時事通信社、The Japan Times、小学館、中国新聞社、中日新聞社、電通、福島民友新聞社、北海道新聞社、北國新聞社、毎日新聞社、宮崎日日新聞社、読売新聞社
(自治体)鳥取県、愛知県
検証された機能
メディア・企業、自治体のサイトにおいて、以下の機能が正常に動作することを確認しました。
・第三者確認済みサイトの証明(SP):サイト運営者が実在する組織であることを証明
・記事の改ざん検知(CA):記事の内容が発信後に書き換えられていないことを証明
③広告取引における「透明化」の実証
デジタル広告の分野では、広告が偽情報サイトなど、広告主の意図しないサイトに掲載されブランドイメージが損なわれる問題があります。本実証には、広告主として、自治体や民間企業が参加。実際の広告配信システム(DSP/SSP)を経由し、OP技術が付与された広告バナーを配信しました。効果測定として、ブランドセーフティ(安全な掲載面か)、ビューアビリティ(広告が見られているか)、アドフラウド(広告詐欺)はないかの各スコアを計測し、OPを利用した広告取引の有用性を確認しました。
④普及に向けたサポート体制の検証
技術的なシステム完成に加え、本事業では「実際に運用できるか」を検証するため、メディア企業等に向けた詳細な運用実証(2026年1月~2月)を行いました。「デプロイチーム(導入支援チーム)」を編成し、審査・発行から技術サポートまでを行いました。Webブラウザ上で簡易に電子署名(CA)を発行・埋め込みができる「実証実験用CA SaaS」も提供。技術的なハードルを大幅に下げられることが確認されました。
⑤国際標準化に向けた動き
OP技術を日本国内だけでなく、世界中で利用できる技術にするため、国際的な標準化活動も進めています。Web技術の標準化団体であるW3Cの年次総会「W3C TPAC 2025」では、OPの技術仕様を世界に向けて公開・発表しました。プラットフォーマーや海外メディアのエンジニアなどが参加し、技術への理解を深めるとともに、国際的なWeb技術コミュニティにおける「仲間づくり」を進めました。このほか、来歴証明など近接技術の関係者とも協議を行い、技術的な連携に向けた合意形成を行いました。
⑥今後の展望
本年度の成果を受け、本組合では「誰もが安心して利用できるインターネット」の実現に向け、以下の取り組みを加速させます。
・導入の簡易化:メディアや自治体が利用している多様なWebサイト管理システム(CMS)に対応するため、クラウド型サービスの開発を進め、より簡単にOPを導入できる環境を整備します。
・ブラウザでの標準表示:現在は検証用に専用の拡張機能を入れる必要がありますが、将来的にはユーザーが何もしなくても、ブラウザ上で自然に「このサイトは安全」と分かるよう、ブラウザ開発企業との連携を強化します。
・広告ビジネスの高度化:安全性だけでなく、OP技術ならではの新しい広告価値を創出し、ビジネスモデルとしての定着を目指します。
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